主人公の私が、大学4年生で卒業論文だのアルバイトだの就職だのといったことが折々に語られている。
主人公がアルバイト先の出版社で、文壇の大先生から聞いた芥川龍之介の言葉。六の宮の姫君が生まれるに至った、その言葉を巡っての謎解き。
探偵といっても、誰かが殺されたり何かが盗まれるわけではない。ある作品が生まれるに当たっての謎を、資料を片っ端から当たって解き明かして行く。後書きによると、この作品は作者の卒論のネタだったという。ふむ。え?そんな過去に溯っての謎解きじゃあ、真実かどうかなんて分からんって?そうかも。でも、普通の殺人だのなんだのの謎解きだって、似たようなところがあるでしょう?
例えば、動機とか。いくら腕利きの探偵だって人の心は読めないでしょう?
いくら心理学がどうのって言ったって、人間の推測から逃れることはできないですよね。それを思えば。これは全然ありかと、思います。
この本を初めて手に取って読んだのは私も主人公と同じ大学4年生頃だった。だから学生時代を思いだし何とも言えない懐かしさを覚えた。
私の卒論はたいして華々しくもなく、本の中の表現を借りるなら「はさみとのり」を使って書いた。
卒業して●年になるが、この本を読むとあの頃の何とも夢見がちでしかし希望にあふれていた気持ちを思い出す。
本の内容に戻ると、主人公はバイト先の出版社に就職する。
就職後の話はこれの次の作品だったか次の次だったか忘れたが。それも、前に読んだ。
私は、この本の何が好きなのだろう。
学生時代への懐かしさだけではない。きっと。
劇的なことなんてほとんど起こらない。
でも、それがいい感じ。主人公の語り口が、やけに冷静で(醒めているわけではない)ほんと学生?と突っ込みたくなるけど、その温度も嫌いではない。
いや。好きなのだろう。うん。
あらためて言葉にしようとすると、うまく出ませんね。
ちなみに、この作品の英語の題は―
A GATEWAY TO LIFE
人生の門出、ですね。バルザックにちなんだとか。いい言葉だなあ。


